堤人形
 種類:土人形および張り子
 制作地:宮城県仙台市
 現制作者:佐藤吉夫(三代目)、佐藤明彦(四代目)
 
 堤人形の創始は江戸時代であるが佐藤家での制作は明治に入ってからである。江戸時代に最盛期を迎えた堤人形も時代の波にさらされてだんだん衰退し制作者の数も減っていった。明治に入ると芳賀家、宇津井家、松根本家、松根分家の4軒になってしまった。さらに大正期に入ると芳賀家と宇津井家2軒を残すのみとなってしまった。その宇津井家も後継者がなく廃業してしまった。
 佐藤家の佐藤大八は明治9年(1976)頃堤町に移住してきた。その子の佐藤大助により佐大商店が開かれ大正7年登り窯が築窯された。佐藤大吉は宇津井家の型と屋号の「おひなっこや」をそっくり受け継いで制作を始めたという。現在の屋号は「つつみのおひなっこや」となっている。
 現在は佐藤明彦が父の吉夫と共に制作を続け、四代目として後を継いでいる。
 訪問して購入したのは二十数年前であるが、現在制作されている猫の種類はかなり多い。古い型も多数含まれているようだ。
 佐藤家の譜系や明治以降の土人形や松川張り子に関しては東北歴史博物館紀要の笠原信男(2017)が詳しい。
 堤人形の歴史に関しては可能なら古作編で扱いたい。
 

 なお、張り子以外はすべて1997年に直接訪問して購入したものである。記憶では青葉区堤町2−10−10の店舗は坂の途中にあるせまい道に面していたと思っていたが記憶違いの思い込みか?旧街道に面したところに店舗はあったようだ。現在店舗は青葉区北根1丁目に移転している。
   

佐藤家の譜系
笠原信男(2017)より


       
初代 佐藤大助  1875−1959  明治8年−昭和34年
二代目 佐藤大吉 1905−1940 明治38年−昭和15年
三代目 佐藤吉夫 1936− 昭和11年−
四代目 佐藤明彦    
       


土人形と張り子
おひなっこやの
土人形(右)と張り子(左)
 遠目にはどちらも土人形に 
見えてしまう

形態は似るが細部には
 いろいろと
違いが見られる 
招き猫(土人形)
豪華な花柄 左手挙げ
金の菊柄も入る 短い尻尾


左手挙げの招き猫
黒い斑の白猫
白猫の下地はパール粒子
あるいは雲母が含まれるのか真珠色
耳の中は朱で塗られているが耳自体に彩色なし
青い首玉に朱の前垂れ
短い尻尾は黒で彩色されている
花巻特有の華やかな花柄


高さ215mm×横105mm×奥行140mm

底部に「つつみ人形 さとう」の銘 胡粉に雲母が含まれるのか


招き猫小
左手挙げ 背面までしっかり彩色されている
朱の豪華な首玉と前垂れ 大きな首玉の結び 

招き猫小
光沢があるので撮影が難しい
機会があればもう一度撮影し直したい
豪華な左手挙げで赤い首玉に赤の前垂れ、金の鈴

高さ160mm×横81mm×奥行122mm

底部には「つつみ人形 さとう」の銘


羽織招き猫
左手挙げ招き猫 手先はひじょうに細い
羽織の袖にも鈴の紋 背中に中輪に三つ鈴の紋

左手挙げの羽織招き猫
耳は張り子と同じ形で中は朱に塗られているが
耳全体の彩色はなし
朱の着物に黄色の襦袢
黒い羽織の背中と袖には
中輪に三つ鈴(ちゅうわにみつすず)の紋がつく


高さ183mm×横117mm×奥行108mm

紋の鈴も金でしっかり描き込まれている
手は後付け?

黒猫の招き猫同様、黒は反射して撮影が難しい
機会があれば撮り直したい。
「つつみ人形 佐藤吉夫」の銘


鯛抱き猫
鯛くわえ猫? 黒く巻いた尻尾
赤い首玉を付ける 水色の縁取りの黒斑

鯛抱き猫
抱くというよりは加えているような構図
手は鯛の上にはかかっていない
白猫は招き猫と同じでパールカラーに仕上がっている
爪が赤で2個所確認できる
目は黄色に黒い瞳で上目遣い
花柄の黒斑には水色の縁取り
赤い首玉を巻く


高さ70mm×横123mm×奥行58mm

「つつみ さとう」の銘






               仙台張り子


 種類:紙張り子
 制作地:宮城県仙台市
 現制作者:佐藤吉夫、佐藤明彦
 
 これも佐藤家で制作されている招き猫。土人形のように見えるが、そばで見ると張り子特有の表面の様子がわかる。

招き猫(張り子)
赤い首玉と前垂れ 左手挙げ
豪華な花模様 短く黒い尻尾


形態や彩色は土人形に似るが一回り大きい
やや上目遣いの左手挙げ招き猫
朱の首玉に朱の前垂れ
首玉に鈴の模様、正面に金の鈴を付ける
前垂れには熨?模様
耳は大きく、中は朱で塗られ、耳自体は彩色されていない
黒の斑には水色の縁取り
全体に豪華な花模様

高さ223mm×横111mm×奥行143mm

土人形の白猫と同じようにパールカラーの下地
やや上目遣い
遠目には土人形に見えるが持つと驚くほど軽い






   オマツリジャパン ”人形を超えた繋がりを”仕事を辞め、家業を継いだ”つつみのおひなっこや”佐藤さんの決意
   つつみのおひなっこやインスタグラム
   JID online 現在の北海道大学が設置された 年大正7年創業 つつみのおひなっこやの七夕土鈴 
            登り窯の画像があります 店舗は移転前で現在の店舗は青葉区北根にあります







参考文献
招き猫尽くし (荒川千尋・板東寛司、1999 私家版)
福の素24号(日本招猫倶楽部会報、1999)
郷土玩具1 紙(牧野玩太郎・福田年行編著、1971 読売新聞社)
日本郷土玩具 東の部(武井武雄、1930 地平社書房)
「鯛車 猫」(鈴木常雄、1972 私家版)
郷土玩具図説第七巻(鈴木常雄、1988覆刻 村田書店)
「面守」(鈴木常雄、1966 私家版)・ 「天狗帖」(鈴木常雄、1967 私家版)郷土玩具図説第五巻(鈴木常雄、1985覆刻 村田書店)
全国郷土玩具ガイド1(畑野栄三、1992 婦女界出版社)
おもちゃ通信200号(平田嘉一、1996 全国郷土玩具友の会近畿支部)
招き猫博覧会(荒川千尋・板東寛二、2001 白石書店)
堤人形と松川ダルマ(笠原信男、2017 東北歴史博物館紀要18) 左記論文へ
松川だるまの民族誌(藤知仁、2005 東北人類学論壇4)  左記論文へ