下総玩具

下総玩具
 種類:張り子・手捻り首人形・他
 制作地:千葉県柏市
 現制作者:廃絶                
    
松本節太郎(1903〜2004)
写真は松本節太郎資料室パンフレットより引用

 下総諸玩具は明治36年東京で生まれた松本節太郎によって創始された。昭和20年3月戦災で東京から柏市に疎開。戦後、手捻りで首人形などを創作し始める。昭和23年ごろから上野松屋前や浅草、亀戸天神などで街頭販売をする。その後首人形、手ひねり、張り子と創作の粋は広がり1500種類以上の作品群となった。初期の頃は制作を依頼に応じて作られることもあった。平成16年11月27日、松本節太郎が101歳で永眠すると共に下総玩具も一代限りで廃絶した。
 招き猫は
  大型 高さ205mm×横150mm×奥行130mm
  中型 高さ147mm×横105mm×奥行 95mm
  小型 高さ 92mm×横 77mm×奥行 65mm
すべて張り子で、中に鈴が入っている。小型は起き上がりになっている。

           もっともスタンダードな中型

三毛、中に鈴が入っている。
       

 下総の諸玩具は実にいろいろな種類が存在します。招き猫も何種類あるかわかりませんが、よく見かけるのはこの型です。写真のものは張り子で毛色は三毛で素地は和紙に近い色を下地に塗っています。招き猫はこの下地の色の他に白と黒が基本となっています。また模様は三毛、黒ブチと黒猫が基本になります。目は細め、丸目などがあり、下地・模様・目の組み合わせによりいろいろなバターンができあがります。また前垂れにいろいろな柄が入ったタイプも存在します。どれも顔は少し上に向いています。
 小型のものは起き上がりになっており、いずれにも中に鈴が入っています。また「下総」と「根戸工房」の所在地を表す紙が貼り付けてあります。

                
 大・中・小  みんな上目がち   大型(中央)
             
 小型(左) 起き上がり

 資料室では見られますが、泥メンコの猫もあったがこれは残念ながら手元にはありません。どうしても招き猫を優先したのでこのようなものは後回しになってしまったのです。それほど高くはないと思われるので何とか手に入れたいものです。

      
※いろいろなバリエーションがある(中型) 拡大     お約束の「下総」と根戸工房のシール

 招き猫ではありませんが、土人形で手びねりの猫もよく見かけます。これもいろいろな種類がたくさんあります。また下総の首人形の中にも猫があります。

   
   手ひねりの猫たち 高さ4〜5cm程度

 首振りも干支をはじめいろいろな種類があります。猫の首振りは全国でもめずらしいのではないかと思います(現在あるのは金沢張り子のうなずきものだけか?)。

 
 首振り猫  ※手びねりの猫たち(犬が二匹混ざっている)   猫の首人形
         
 ※猫たち

                                 注 ※は松本節太郎資料室展示物、それ以外は=^・^=所有

 左の新聞記事は私が持っている戦前の郷土玩具の本に挟んであったものです。もちろん戦後の新聞ですが、引き揚げ者が・・・、田端駅近くで蒸気機関車の汽笛や煙、火の粉が・・・、とあるので昭和20年代から30年代初めあたりでしょうか。上野や亀戸、目黒に売りに来ると書かれています。
 「風格がひょうひょうとしていて、俗っぽさがなく、清らかさがあるのが街ゆく人の心をうちます。それは作者の持つ個性でもありましょうが、千葉の持つ土の味わいでもありましょう。」とあります。

 一度は柏にあった根戸工房を訪ねてみたかったのですが、結局訪ねることなく廃絶してしまいました。「房総の郷土玩具」(石井車偶庵・他)によれば生活が大変な中、奥さんの内助の功をなくしては人形制作に打ち込めなかったことや娘さんが後を継ぐことが書いてあります。しかし、何年か前にいっしょに制作をしていた娘さんが先に亡くなり、気を落としてもうあまり制作していないという話を土鈴関係の方から聞いたことがありました。周りの人から励まされ、支えられたからこそ、人形作りを100歳を超えるまで続けられたのでしょう。
 節太郎さんが亡くなった今、手びねりの首人形などはもう制作が難しいでしょう。張り子もまねをされることを嫌ったとのことで型などは処分された可能性があるという話も耳にしました。
 見ればすぐに松本作とわかる下総玩具。廃絶しても全国に出て行った膨大な数の作品たちはこれからもみんなに愛され続けるでしょう。


ギャラリーヌーベル「松本節太郎資料室
 廃絶してしまった下総玩具をまとめてみることができる場所があります。それが今回訪問した「松本節太郎資料室」です。松本さんが制作をしていた根戸工房からそれほど離れていないギャラリーヌーベル内に場所にあります。松本節太郎さんは同ギャラリー主催による東葛地区の文化功労者に贈られるヌーベル文化賞の第1回受賞者(昭和63年)でそれ以来社長との文化交流が続いていたのだそうです。その後、松本さんが100歳を超えたとき、後継者がいないので同ギャラリーの社長に作品を寄贈し、保存を依頼したことから、寄贈された作品を展示するスペースが平成15年(2003年)に自社画廊の2階の一室に「松本節太郎資料室」として開設されました。
 膨大な作品の中から、これだけまとまっていつでも見学できる場所はなかなかありません。一代だけで消えてしまった「下総玩具」の業績をぜひ招き猫ファンだけに限らず見学していただきたいと思います。

 資料室全景  下総天神  
 古書だるまや花魁  いろいろな張り子面
 彩色前の首人形 後ろの猫の表情がいいな!  左端は雨だれ  右下の「唐辛子ネズミ」がおもしろい
    
 干支の首振り    

 首人形もいろいろと見ることができます。最大の「西遊記」やこれは欲しくなる「日本の神」など、一つ一つの顔をじっくり見ていると飽きません。雨だれという首人形は始めて見ました。100歳になってから制作を始めたとのことですので、ほとんど流通しなかったのでしょう。

         
    いろいろな首人形      これいいな!日本の神



     所在地:柏市旭町4−7−1 ギャラリーヌーベル内
     電話 :04−7146−6800
     開館時間:10:00〜19:00(水曜定休)        
     入場料:無料

インターネットギャラリー「下総人形館」
 なお、遠方で見学に行くのが難しい方は地元の眼鏡店(かなり広い分野を扱っているようですが)、OPTIC−SHIMIZUのHP内にあるインターネットギャラリー「下総人形館」をご覧ください。「松本節太郎資料室」の人形達が拡大画像付きで紹介されています。残念ながらまだ猫(首人形のみはある)はまだですが、現在撮影を進めて少しずつ公開されるということです。

      

      
※駐車場はありません。駅前に駐車場がありますが、混んでいたりなれない道だとわかりづらいので、マツモトキヨシの有料駐車場が便利です。お菓子など買い物をすれば、一定時間無料になります。
                               

 地元のシミズ眼鏡(OPTIK−SHIMIZU)のHPにあるGallary下総人形館ではたくさんの作品を拡大写真付きで見ることができます。「ねこれくと」ではわからない細部も見ることができます。リンクも快くOKを頂きました。これからも順次掲載作品が増えていくとのことです。

         
                     
  ギャラリーヌーベル

                                    (資料室の写真はすべて許可を取って撮影・掲載しています)

                  
参考文献
房総の郷土玩具(石井車偶庵・相場野歩、1976 土筆社)
招き猫尽くし (荒川千尋・板東寛司、1999 私家版)
郷土玩具1 紙 3 土(牧野玩太郎・福田年行編著、1971 読売新聞社)
郷土玩具図説第五巻(鈴木常雄、1985覆刻 村田書店)
全国郷土玩具ガイド2(畑野栄三、1992 婦女界出版社)
おもちゃ通信200号(平田嘉一、1996 全国郷土玩具友の会近畿支部)
東葛まいにち 平成15年9月10日 第452号 (東葛毎日新聞社)



夢の跡、根戸工房跡を訪ねる (2007年9月29日)
 下総張り子の制作者、松本節太郎さんが亡くなり、3年近くたちます。生前、いつでも行けると思っている内に亡くなられてしまいました。ギャラリーヌーベル「松本節太郎資料室へ行ったときも行きそこなってしまいました。
 今回別件でごく近くまで行きましたので、どのような状態になっているかわかりませんが寄ってくることにしました。
 あらかじめ地図で検索しておいたので場所はすぐわかりました。大きな工業の向かいですが、ごく普通の住宅街です。きっと工房を開いたころは寂しいところだったに違いありません。表札はまだかかったままです。どこまでが松本宅かはわかりませんが、どうもこの一角は松本さんの宅地のようです。まわりを回ってみると裏の窓際に張り子が置いてあるのがガラス越しに見えます。まさに数々のユニークな張り子を創作し、送り出した夢の跡です。いずれこれらの張り子もかたづけられ、工房も取り壊されるかもしれません。
 かつて数々の夢を作り続けた根戸工房の名前と作品だけはいつまでも残り続けるでしょう。

 多くの傑作を生み出した根戸工房跡  下総張り子 夢の跡
               
 残された張り子がもの悲しい