中野人形  暫定版      

中野人形
 種類:土人形
 制作地:長野県中野市
 現制作者:奈良久雄(5代目)
        奈良由起夫(6代目)

 信州中野では伏見系の奈良家と三河系の西原家が土人形を制作している。
 奈良家では5代目の奈良久雄と6代目の奈良由起夫の親子二人が制作に取り組んでいる。

 奈良家の人形制作に関しては「中野人形 奈良家」をご覧ください。
 奈良久雄の子由起夫は他業に携わっていたが、平成20年(2008)に退職してパート務めをしながら父親の元で土人形づくりを学び、専業となって中野人形六代目を継ぐことを決意した。翌2009年(平成21年)初めてひな市に作品を出品した。現在は親子でそれぞれに制作を続けている。ここでは六代目奈良由紀夫の作品を扱う。

            
奈良栄吉 初代 文化3年ー明治3年     -
奈良豊吉 二代目 天保3年-大正5年 1833-1916 
奈良五三郎 三代目 文久3年-昭和12年  1863-1937
奈良政治 四代目 明治38年-昭和34年 1905-1959
   いし 政治の妻 明治41年-昭和60年 1908-1985
奈良久雄 五代目 昭和7年- 1932-
   清江 久雄の妻 昭和9年-  1934-
 奈良由起夫 六代目 昭和45年- 1970-        久雄次男



 猫の土人形に関していえば、父親の奈良久雄の型を受け継いでいる。それ以外にも最近はオリジナルの型やデザインを意欲的に制作している。奈良久雄も高齢となり作品を多く制作できなくなった中で、50代の奈良由起夫は精力的に作品を生み出している。

 残念ながら東京にいると西原家を含めた中野土人形を見たり購入したりする機会は3月の中野ひな市しかない。今回はこの図鑑で初めての試みとして中野ひな市に出品された奈良由起夫作の中野人形を猫を中心にその変化をたどりながら奈良由起夫作の猫作品を取り上げていく。こちらの勝手な思い込みで見当違いがあるかもしれないがその点はご容赦願いたい。紹介する中野人形はひな市会場で撮影したものが中心となっている。したがってほとんどが正面からのみとなっている。また正確なサイズも不明である。
 六代目奈良由起夫が土人形を制作を始めたのは2008年からとある。それ以前に父親久雄を手伝ったことがあるのかは不明である。過去の中野ひな市の画像を見ると2008年の販売ラベルはまだ「西原」と「奈良」という表示になっている。しかし、翌2009年には「奈良由起夫」、「奈良久雄」と二人に分かれて、この年に本格的に制作を始めて販売できるというレベルに達したと判断したのではないかと思われる。それから毎年ひな市に出品されるようになり、古作の制作と同時に新作の発表もおこなっている。


                                      


 ひな市初出品の2019年から2025年までの作品を追ってみたい。

初めての中野ひな市出品(2009年)  
2009年中野ひな市
奈良由起夫初めてのひな市出品
手前が奈良由起夫作
奥が奈良久雄作
画像には残っていなかったが
ねこれくとのひな市報告には
20点出品と記録があった
出品はふぐ乗り大黒
帳面大黒、天神
そして猫2種類

ちなみに奈良久雄出品数
50数点と記録にはある
猫は子守猫と単独の招き猫が
出品された

子守猫5点、招き猫2点であった
子守猫はねんねこ半纏は群青に赤の麻の葉と
濃い群青?に青の麻の葉で
着物はどちらも同じ柄となっている
半纏には千萬両の小判柄、
手には福寿の枡を持っている
仔猫が右手で招いている
招き猫単独型
真面目できれいな彩色の招き猫

赤い首たまには「福入」の文字
からだの斑点は「大入」
まだ中野陣屋県庁記念館前の通りに
あった絵付け体験場所での
奈良久雄・由起夫親子

2009年初出品
 奈良由起夫さんの初期の猫の作品を見ると、まだ奈良久雄さんのコピーといった彩色である。奈良久雄さんが高齢となりだんだん枯れた味わいになっていくのとは逆にしっかりした彩色をしている。出品していた猫作品も最初の年は招き猫(単独)と子守猫だった。その後、だんだん種類を増やしていったが型は同じものであった。


2010年の中野ひな市出品作品  
紅白ロープの左側が
奈良由起夫作
作品の種類が増えている
新たに加わった
座布団座り招き猫と猫つぐら 
招き猫の彩色は久雄作品に
ほぼ準じた彩色
子守猫はねんねこ半纏の色が
昨年とは異なる

2010年
 2010年になると人形の種類や数も増えていった。猫も前年の招き猫(単独)と子守猫以外に座布団座り親子招きや猫つぐらなど久雄作品でも定番の型が加わった。猫以外の人形も種類が増えていった。


 2011年は都合により、ひな市欠席のため情報・画像はなし。


2012年の中野ひな市出品作品  
種類も増えて
98点が出品された
これは辰年h向けての
創作物だろうか
いろいろと実験的?な
作品も出品された
ひょっとこのお面を付けた
饅頭食いの大小
着物の柄が異なる
さらに泣き顔の人形もある

こちらも実験的な招き猫
通常版の他に
ギャング招き猫が登場した
通常版の座布団座り親子招き猫
ギャング招き猫
細い目で目つきが悪い
百戦錬磨で耳が欠けている
注目すべきは眉毛が付いたことである
これは細い目とのバランスの
関係かもしれない

2012年
 2011年は諸事情で中野ひな市は欠席だったが、翌年の2012年には出品作品に変化が見える。創作物と思われる干支ものも出品されている。饅頭喰いには実験的な面相が登場している。招き猫にも変化があった。久雄作品の招き猫には基本的には眉毛がない。これは現在まで一貫している。由起夫作品にギャング猫が登場した。通常の招き猫を野良猫の世界を渡り歩いているような招き猫に仕上げている。この猫は目を細めているのでバランスを取るためにか初めて招き猫に眉毛が描かれた。耳には、けんかで欠けたあとがある。ちなみに通常の招き猫にはまだ眉毛はない.瓢簞かつぎ童子などの小物も制作された。



2013年の中野ひな市出品作品  
大型の作品も増えてきた
このころから久雄作品に
大型が少なくなってくる
世代交代の準備なのか
年齢によるものかは
わからない
寝牛も従来から
制作されている作品だが、
スズメやカタツムリで
差別化を図っている
「一年生」も
この年に登場した新作
饅頭喰いの表情は
通常のものだけになった
子守猫はモミジ柄の
ねんねこ半纏 
まだこれらの猫には
眉毛はない
白猫の招き猫が出品された
この猫には眉毛がある
やはり目が細いので
バランスをとるためか
ちょっと困り顔のようにも見える
表情がおもしろい
この年から猫の頬にチークが入った
久雄作にはない

2013年
 2013年になるとさらに制作種類は増えていた。奈良久雄は地元の新入生用への贈呈用に土人形の制作を市から依頼されていた。いつまでやっていたかは不明である。由起夫作品にも「1年生」が登場した。新入生への贈呈用に制作されたのかは不明である。猫に関しては従来の型と同じ型が制作されたが初めて白猫が登場した。この年から猫の頬に紅が入るようになった(チークが入る)。



2014年の中野ひな市出品作品   
奈良由起夫出品作品
総数192点だった
小型の作品
制作された土人形の種類も
かなり増えた
 定番の単独招き猫
この年から猫に眉毛が入った 
不思議な薄いピンクの招き猫
昨年までは白猫だった


「中野人形師 奈良由起夫展」が
日本土人形資料館で
開催されていた
そこに出品されていた
座布団座り招き猫が似ている
色味は照明の関係で
わかりづらいが
座布団の柄の「たま」の顔にも
似ている
ちなみにたまのガールフレンドは
ピンクのペルシャ猫である
すっかり定番となった
 座布団座り親子招き猫 
猫つぐらには
黒斑と白の招き猫が
中で招いている
小さな猫にも眉毛がある
子守猫
モミジ柄のねんねこ半纏は
定番の柄となった

2014年
 2014年には種類も出品数も格段に多くなる。この年に猫に関して大きな変化があった。前年まではギャング猫や白招き猫にしかなかった眉毛がすべての猫に描かれた。以前ギャング招き猫で用いられたいわゆる横眉毛である。型は同じでも久雄作品とは面相で差別化が進んだ。



2015年の中野ひな市出品作品  
招き猫にはしっかり眉毛がある
仔猫にも眉毛が描かれている
猫つぐらの中の猫は2匹とも
同じ柄になっている
新作の猫もの
「おこた招き」
こたつ物は猫以外にも何種類かある
ブローチ
このような小物も今回初めて出品された
1年生」に男の子と女の子が登場した

2015年
 猫ものではこれまでになかった「おこた招き」の新作も猫物に加わった。ブローチもこの年に初めて出品された。 
猫の眉毛は前年はまだ控えめであったが、この年からは猫にはしっかりした眉毛が入った。

2015年用の年賀切手に「羊」が採用された。

2015年(平成27年)用年賀切手になった中野人形  
出品された奈良由起夫作の羊
奈良久雄作 奈良由起夫作
2015年(平成27年)用の年賀切手に採用された中野人形の羊
奈良由起夫・久雄両名が制作しているが、切手の原画になったのは「白い柄の配列の始点」 、
「小判のような金の柄とそのまわりの銀の斑点の形状と配置」、「耳の彩色」、「目の彩色」などから
奈良由起夫作の羊が原型になったと思われる。



2016年の中野ひな市出品作品  
この展示画像は一部だが
大型の作品も多くなってきた

手前は干支にちなんだ
「桃持ち観音」
新作のようだ
これも干支にちなんだ
新作と思われる

「桃持ち親子猿」と「桃尻猿」
飾り猫が出品された
やはり眉毛がある
前垂れの柄は招き猫
その眉毛は放射状

2016年
 すべての猫に眉毛が描かれるようになっていたが、まだこのころの眉毛は試行錯誤の段階だったように見える。横眉毛と放射眉毛が混在している。飾り猫が出品された。飾り猫の前垂れには放射状の眉をした招き猫が装飾として描かれている。



2017年の中野ひな市出品作品  
この年は273点を出品した
三作者者合計465点の
6割近くを占めた

多くの出品作品の中には
ブローチのような
小型の作品もあるが、
大型の作品も多く見られた
また従来の型に
工夫を凝らして
作品数も増えていった
猫作品に関しては招き猫(単独)、
座布団座り招き猫、猫つぐら、
子守猫、おこた猫、飾り猫と
従来と同じラインアップだった
飾り猫の首玉の文字か
「福ねこ」になった
前垂れの、模様は変わらず

どの猫も口の形が
従来の口角が上がったω型から
水平に近くなっている

2017年
 作品数や種類がひじょうに増えた。猫に関しての作品の種類は前年と同じ。



2018年のひな市出品  
奈良久雄さんの作品が
だんだん少なくなる中で
由起夫さんの大型作品が
目立つようになってきた
地元の作詞作曲家の二人が
土人形になった
高野辰之(左)と中山晋平(右)
獅子舞子犬
戌年の干支ものだが
この年から獅子舞の干支ものが
誕生したようだ
猫に関しての出品は
従来と変わらなかったようである
子守猫は定番のモミジの
ねんねこ半纏がなく
単色の半纏に小判柄
座布団座り親子猫招きも
座布団の色がねんねこ半纏と
同じ色だった
飾り猫の前垂れに
達磨や小槌など複数の

縁起物が加わって
華やかになった

2018年
 この年も猫に関しては種類これまでと同じ。座布団座り親子招き猫が紙のトレーに入っているのは座布団の房の水引が折れないようにとの配慮。



2019年の中野ひな市出品作品  
この年も奈良由起夫さんの
棚には大小多くの
土人形が並んだ
干支ものは積極的に
制作しているようで
定番化した作品もある
「亥乗の獅子」も昨年の同様に
獅子舞ものが
定番化してきたようだ
「亥乗り枡」は祈りますに
掛けているのか?
猫に関しては
定番の作品が並んだ
その中で特筆すべきは
黒猫の出現である
型は三毛と同じ
この黒猫で初めて
「放射状」の眉が出現した
飾り猫の前垂れの柄では
放射状の眉はあったが
土人形の猫の面相では
初めてである
三毛に関しては
通常の横眉毛である
飾り猫にも黒猫が出現した
こちらも眉の描き方は
招き猫と同様に放射状である
まちなか交流館で
絵付け体験で指導中
(2018)

2019年
 以外な感じがしたが、この年に初めて黒猫が出品された。これまで出ていたのはすべて白の三毛柄であった。座布団座り親子招きや飾り猫も黒猫が制作された。黒猫はすべて眉は放射状に描かれている。理由は不明である。本来は眉毛のない奈良久雄作品にも黒猫には放射状の眉毛がある。



2020年中野ひな市は新型コロナ感染拡大により中止となった。


                                          

2021年の中野ひな市出品作品 
この年から移転した
商工会議所の会場で
開催されている
前年のひな市が
新型コロナウイルスの感染拡大で
中止になったので
かなりストック品が
含まれているようである

なお、この年からハガキによる
事前抽選方式になった
全体では出品数が多かった
「すいか抱き童子」などという
変わり人形もあった
干支もこの年は丑年であったが
前年の子年対応品が目立った
定番となった獅子舞いの
干支もの

「ね乗り獅子」
「ねずみの嫁入り」
これも干支ものとして
制作されたようだ
猫も定番品が並んでいたが
新作もあった
野球招き猫
基本形は通常の単独招き猫
いろいろ小道具が付いて
雰囲気のまったく異なる
招き猫になっている
背番号はニャンニャンニャン

地元の独立リーグ
信濃グランセローズに
ちなんでいるようだ
奈良久雄さんもチーム応援用の
大猫を制作している
大猫が出品された
あまり飾りのないシンプルな招き猫
眉は放射状
頬のチークはない

2021年
 コロナ禍明け(まだ実際には感染が続いていたが)のひな市は密集防止からかハガキによる事前抽選制が導入された。我が家の猫のメロ君名でも応募したが、落選してしまった。しかも販売当日の見学会はなし。したがって出品作品を見学するには事前の見学会に行くしかない。
この年は大猫が出品されていた。シンプルな絵付けであった。眉は放射状。おそらく白の三毛猫としては初めての放射状眉毛ではないだろうか。


2022年の中野ひな市出品作品  
創作ものの「酔っ払いお父さん」が
出たのもこの年 
 なぜか「サンタさん」が出た 
三太さん?
 定番干支の獅子もの 
「虎乗りお獅子」
 猫ではなく虎 
でもネコ科
「飾り虎」
定番ものの猫には
三毛猫と黒猫が揃った
この年の最も大きな変化は
猫の眉毛が
すべて放射型になったこと
通常版単独招き猫に
右手上げが登場したことである
達磨乗り招き猫もある
猫つぐらが大幅リニューアル
猫が座り猫1匹になった
 三毛と黒の飾り猫 
大猫の首玉が豪華になった
柄も正面は「大吉」、
挙げている右手には「大入り」
大猫にもチークが入った
赤の細い縦縞は
信濃グランセローズのユニホーム
帽子の下に見える眉毛は
これも放射状

2022年
 前年は中止になった2020年のストック品がかなり含まれていたようである。この2022年になって猫に大きな変化が生まれた。招き猫・飾り猫を含めてすべての猫が放射状の眉毛になった。まだこれまで貯金玉を原型とする招き猫は左手挙げのみだった、この招き猫に右手挙げが加わった。大猫の正面の柄が「大吉」になり、挙げている右手に「大入」が入る。久雄作品の招き猫は初期を除き「大入」の文字が定番だが、由起夫作品では「大吉」の柄も増えていく。


2023年の中野ひな市出品作品  
古くからある型も
復活させているが、
それらを元にして
組み合わせた作品も
生み出している
  
 獅子干支もの 
「兎とお獅子」
これも新作
「招き猫抱き童子」

久雄作品に
犬抱きぼこがあったが
こちらは大きな招き猫を
抱いている
新作の
「眠り招き猫」
従来の招き猫の型に加えて
新しい型が誕生した
左手を挙げ、
右手の親指を立てた

「いいね!招き猫」
斑は大吉
右手上げで
顔も腹もふっくらの

「福々招き猫」
腹には福々
通常版の単独白招き猫
左手挙げと右手上げがある
通常版の黒招き猫
こちらも左手挙げと右手上げがある
野球招き猫はブルーのユニフォーム
従来の左手挙げに加えて
右手挙げが登場した
ワル猫招き猫がいた
柄は「ワル」
この猫だけは横眉毛

2023年
 この年には従来の貯金玉を元にした招き猫以外に「いいね!招き猫」や「福々招き猫」などの新しく型を起こした招き猫も登場した。これらの新型も含めてすべての猫の眉毛は放射状となっている。



                                          

2024年の中野ひな市 出品作品  
この年も多くの招き猫が
出品された
「猫の饅頭食い」が登場した
野球招き猫は
右手上げに統一

ドジャースとベイスターズの
ユニフォーム姿が
並んでいた

昨年のブルーの
ユニフォームは

ベイスターズへの
伏線だったのか?
飾り猫が招き猫になった
昨年は飾り猫が
出品されていなかったはず
2022年は
通常の飾り猫だった
子守猫のねんねこ半纏は
シンプルな小判柄で
色違いが出品された
眠り招き猫も
布団の色違いが出た
特大招き猫の正面は「大吉」、
右腕は「大入」の柄が
定着したようだ 

2024年
 飾り猫が招き猫になっており、通常の飾り猫は出品されていなかった。新作として猫の饅頭喰いも出品された。



2025年中野ひな市   
この年の展示会初日には
まだ作品搬入が
間に合っていないものが
かなりあった

獅子舞ものの
干支もまだだった 
 

「大吉」柄の飾り招き猫
 眠り招き猫 
水色布団
定番の招き猫は
いろいろな種類の型を
使い分けているわけではなく、
基本は右手上げか左手挙げに
彩色の違いのみ
赤い首玉の柄も
花柄(バラ?)が定着してきた
右手上げと左手上げの
白招き猫
こちらも首玉の彩色は
同じ花柄になっている
座布団座り親子招き猫も
基本に忠実な彩色の
作品が多い
段ボールの台は
座布団の水引が
折れないようにの配慮
単独招き猫に色違いが登場した
右挙げ左上げがある
これまで招き猫には
白猫三毛と黒猫以外はなかった
以前にも出品されていた
「グッド招き猫」に
色違いが加わった
昨年の名称は
「いいね!招き猫」だった
猫の饅頭食いは
横眉毛に
戻っている
一時的なものかは不明
水引でしばられた「三匹組猫」
後ろに由起夫さんの愛犬、
柴犬をモチーフにした
三匹組柴も見えている
三匹組猫に
束ねられているのは
この「ぶた猫」

3色ある

元は丸犬が原型と思われる
犬の時も「ぶた犬」と
呼ばれていたらしい
新作の
「招き猫三兄弟」
制作者本人が
奈良家らしくないと
コメントしているが
なかなかかわいい
いつからかはわからないが
「六代目奈良由起夫」の
銘ではなく
「奈良家」のスタンプが
押されるようになった
左は10年ほど前に
制作依頼した作品だが
裏には本人の銘が入っている
平成27年(2015)の依頼品
新作として出展されたときに
制作依頼した一点
「猿の桃饅頭喰い」や
「娘饅頭喰い」など
饅頭喰いものも
いろいろとバリエーションが
増えている

2025年
 この年に猫の彩色がいろいろと加わった。単独招き猫にハチワレ三毛猫が登場した。「いいね!招き猫(グッド!招き猫)」や丸犬を限定にしていると思われる「ぶた猫」や「招き猫三兄弟」などという新作も加わった。なぜか「猫の饅頭食い」だけ元の横眉毛になっていた。
饅頭喰いも「猿の桃饅頭喰い」や「娘饅頭喰い」などいろいろと種類が豊富になっている。






 ざっと10数年にわたる作品を紹介してきたが、奈良由起夫作中野人形をまだまだ進化を続けているようだ。これからどのように変化していくか楽しみである。最近の傾向としては猫に関しては放射状の眉毛が定着したようである。また書かれている縁起文字として「招福」以外に「大吉」が多く用いられている。口は奈良久雄作は小さめの山型であるのに対し奈良由起夫作は口角が少し上がったω型が多くかわいい顔つきになっている作品が多い。また久雄作品では口の形が「阿吽」となっているペア物があるが由起夫作では見かけたことはない。古い型である仔猫も作品としてみたことはない。最近のインスタを見ると従来の単独招き猫よりかなり小型の招き猫が制作されているようである。これは2025年のひな市の展示では見かけなかった。
 現在我が家にある由起夫作の猫はわずかしかないので、今後おもだった猫を蒐集していくのが第一の課題となっている。

 やがて制作から20年、年齢的にも円熟期に入るとどのような作品を生み出していくか楽しみである。
 奈良由起夫さんは若い(とはいってもすでに50代半ばになっている!)のでネットなども積極的に利用していろいろと情報を発信している。ぜひそちらでも、現在の制作情報をご覧頂きたい。

奈良由起夫作の猫たち ※価格は展示当時のもの
招き猫単体 初期 招き猫単体 横眉毛付き
招き猫単体 放射状眉毛付き 黒招き猫
白招き猫 三毛招き猫
座布団座り招き猫 初期 座布団座り招き猫 眉毛付き
座布団座り黒招き猫 子守猫 初期
子守猫 眉毛付き おこた猫
猫つぐら2匹 初期 猫つぐら 1匹
白飾り猫 黒飾り猫
初期の頃の猫には眉毛がなかった
これは奈良久雄作品と同様である
やがて横眉毛の猫が出現した
これは人物の土人形と同様の面相になる
やがて放射状の眉毛が登場する
現在(2025)では例外を除き
放射状の眉毛が定着している
古い型の中では仔猫は猫つぐらに入ったものしか
見かけたことはない
大猫
福々猫 眠り招き
野球招き猫 猫の饅頭喰い
いいね!招き猫 グッド招き猫
ぶた猫 招き猫三兄弟
招き猫達磨 白 招き猫達磨 黒







 参考資料として五代目奈良久雄作の代表的な猫たちも掲載しておく。サイズは若干異なるかもしれないがそちらを参照してほしい。

<参考資料>奈良久雄作の猫たち 中野人形(奈良久雄作)へ
黒猫以外は眉毛は描かれていない
口は小さめの山型(∧)になる
大猫
初期の作品以外は
いろいろなトッピングが附属するのが特徴









     奈良由起夫インスタグラム     





参考文献
招き猫尽くし (荒川千尋・板東寛司、1999 私家版)
中野の土人形 改訂版(小古井嘉幸 1994年 日本土人形資料館)初版1983
古作中野土人形(中野土人形写真集刊行委員会、1989 中野土人形写真集刊行会)
信州中野奈良家の土人形(中野土人形愛好会、1994 中野土人形愛好会)
中野土びな物語(高橋達男、1990 北信ローカル社出版センター)
郷土玩具1 紙(牧野玩太郎・福田年行編著、1971 読売新聞社)
日本郷土玩具 東の部(武井武雄、1930 地平社書房)
「鯛車 猫」(鈴木常雄、1972 私家版)
郷土玩具図説第七巻(鈴木常雄、1988覆刻 村田書店)
全国郷土玩具ガイド1(畑野栄三、1992 婦女界出版社)
おもちゃ通信200号(平田嘉一、1996 全国郷土玩具友の会近畿支部)
招き猫博覧会(荒川千尋・板東寛二、2001 白石書店)