戦前に制作された河村目呂二のブロンズ猫が出品された。同時にテラコッタの猫と書簡も出品された。
この猫を見たとき最初に頭に浮かんだのは「目呂二抄」の表紙になっている目呂二お気に入りの猫だった。目呂二ライブラリーによれば「目呂二抄の猫はテラコッタということだった。いずれせよこの猫との類似性から関係があるのはないかと思っている。
共箱には昭和14年構造社展出展と墨書きがあり、別に同年の出品目録が出品されているのでこの年に出展された作品に間違いはなさそうである。別に共箱には「猫」の紙が貼ってある。これは旧所蔵者によって貼られたものであろう。目呂二ライブラリーでも目呂二の作品の題名は同じような題名が多いので目録の作品がどのような作品だったのかは特定するのが難しいそうである。
目呂二作のブロンズ像は戦中の金属供出で自性院に寄贈されたブロンズ猫をはじめ、多くが失われどのような作品が現存するか不明な点が多い。
この作品は某コレクターのもとに新たに収蔵されたと聞く。
| 目呂二作ブロンズ製の猫 | |||||
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サイズは29cm(高さ)×23cm(横)×17cm(奥行) ※顔を正面向きにしたとき 掲載許可を得ていません ご連絡いただければ正式に申請いたします |
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| この蓋は入れ違いと思われる | 「目呂二抄」の猫に耳や目の形状が似る | ||||
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| 「龍興」の署名 | 出展作であることの墨書き | ||||
| 目呂二作のブロンズ像の猫 正式題名はわからないが 同時に出品されていた構造社展の出品目録から『猫』と思われる 目呂二ライブラリーによれば、目呂二の作品は「猫」や「子猫」などが多く、題名と作品を一致させることが難しいという 共箱の蓋には『親子猫』とあるがこれは入れ違いだと思われる 別に箱には「猫」の紙も貼ってある この作品は大阪在住だった桐山嘉一郎氏の旧所蔵品とみられる 目呂二と桐山嘉一郎の書簡から雨田光平への作品依頼の仲介を目呂二が果たしていたこともうかがえる。 桐山嘉一郎は趣味として「美術工芸」とあり多くの美術品を収集していたようである。所蔵作品を寄贈した記録も残っている。 骨董だけでなく新しい作品の収集にも務めたようである。この目呂二の「猫」もそのような一点だったのかもしれない。 「桐山嘉一郎」の名は目呂二の日記にも時々見られるそうでパトロン的な存在であったかもしれないとのことであった。 現在出品された書簡を分析中 |
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| 桐山嘉一郎 (明治31年(1898)- ? ) 三重県出身 大阪市阿倍野区在住 山口高等商業学校(現山口大学)を大正10年に卒業し、山口銀行→三和銀行を経て 昭和28年共進社油脂工業(現牛乳石鹸供進社))監査役となる。健康上の理由から1969年頃に退社している。 趣味は読書・美術工芸とある。 (職員録、紳士録、人事興信録より編集) |
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| 「目呂二抄」表紙の猫 | |
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| 目呂二ライブラリー Instagramより | 「目呂二抄」表紙 |
| テラコッタ製の猫の頭部 製作途中で割れてしまったのだろうか? 清原ソロ(2003)によれば戦前の千川の家の裏庭にテラコッタ用の窯があったという |
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別に出品された構造社展出品目録と手紙があったが、目録はこのブロンズ猫に付けたものであろう。
また手紙によれば、桐山嘉一郎は雨田光平に狛犬の制作を依頼していたようである。その仲介として目呂二が価格について桐山に提案している。40円位で制作ということだったが、自分の作品を付けるので50円ではどうかと桐山に提案している。
なお、このテラコッタの猫には柿の古木で生漆塗りの台板がついたようであるが、出品の中の画像には見当たらない。もしかすると共箱の中にあるのか?共箱も古めいて見えるがもしかすると生漆塗りなのか?現物を見ていないので詳細は不明である。
おそらく桐山嘉一郎は当時の現代作家として目呂二の作品を多く所有していたと思われるが、その後どうなったのか気がかりである。
| 桐山嘉一郎氏旧所蔵品のテラコッタの座り猫 | |||||
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参考文献
目呂二抄(河村目呂二、1974 アポロン社)
おばあさんの雑記帳(清原ソロ、2003 私家版)
猫の目呂二 その時代(山田賢二、1984 名古屋豆本)
目呂二哀愁(山田賢二、1991 緑の笛豆本の会)
ねこの先生 河村目呂二 改訂版(荒川千尋・板東寛司、2024 風呂猫)
明鏡止水(雨田光平、1972、えちぜん豆本
化粧品石鹸年鑑1970年版(日本商業新聞社、1970 日本商業新聞社)
化学工業会社工場名簿昭和44年版(通商産業大臣官房調査統計部編、1969 通商産業調査会)
日本職員録第7版(人事興信所編、1958 人事興信所)
産経日本紳士年鑑第4版(産経新聞年鑑局、1963)
日本紳士録第51版(交詢社編、1959 交詢社)
人事興信録第19版(人事興信所、1957 人事興信所)
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